中学校2年生に薦めたい本100冊vol.10 1月

新書本から世界が見える

世界について知るということが
これからの若い人に求められています。
世界がグローバル化する一方で、
国家間の紛争は絶えず、
国際理解・国際協力の必要性が
増してきているからです。
まずは岩波ジュニア新書のこの8冊で
世界を学んでみませんか。

その1
「新版 国際機関ってどんなところ」
(原康)

本書の最大の特徴は、最終章での
若い人に向けてのメッセージです。
広い視野から世界を見渡すことの
重要性を説きながら、
まだまだ日本人職員の少ない
国際機関で働くことの魅力を
力説しています。
「平和主義と経済力のプレゼンス、
 これが国際社会における
 日本の座標軸、
 世界における日本の
 存在理由でもあるのです。」

その2
「世界の国1位と最下位」(眞淳平)

本書の特徴は「国際情勢」を
項目ごとのランキング形式で
紹介している点です。
GDPや貧困率などの項目の
上位国と下位国を比較し、
そうした現状が生まれた
歴史的背景や問題点にまで
言及しています。
ただし本書はあくまでも入門書です。
この本を読んで疑問に感じたことを、
さらに自分で調べる。
そのための一冊です。

その3
「中国のいまがわかる本」(上村孝治)

近くて遠い国・中国に関心を持ち、
両国関係について
自分の考えをしっかり持つことが
大切であると考えます。
本書の結び。
「日本の若い世代は大変です。
 歴史の負の遺産を背負いながら、
 巨大化していく複雑な国と
 向き合わないといけないのですから。
 でもそれは、見方を変えると、
 とても挑戦的で刺激的で、
 面白いことなのかもしれません。」

その4
「ソウルで学ぼう」(水野俊平)

近くて遠い国・韓国。
子どもたちがまず知っておくべき国は、
韓国だと私は思います。
高校生への修学旅行前の
ガイドとして書かれたという本書。
旅行ガイドブックの方が
ビジュアルでわかりやすいのですが、
読んで理解することも大切です。
そして「大づかみ」で書かれてある
本書を出発点に、
韓国理解への学習を
深めることができればと思います。

その5
「アフリカのいまを知ろう」(山田肖子)

アフリカの国々には
不自然なくらい
直線的な国境線があります。
それは西欧諸国による
植民地の境界の名残なのです。
「かわいそう」という目で見ては
いけません。
むしろ「学びたい」という気持ちで
アフリカの人たちと
接することが大切なのでしょう。
メディアは薄っぺらな情報しか
流していないことに気付かされます。

その6
「イラクの戦場で学んだこと」
(岸谷美穂)

著者は「一般市民それぞれが、
何が正しくて
何が間違っているのかを判断し、
それぞれの国家がやっていることを
監視し是正していくこと」が
大切と説きます。
「世界を知る」ためには
国際社会に横たわっている問題と
その解決に砕身している
人間のいること、
その両方を理解することが
重要なのだと考えます。

その7
「中東から世界が見える」(酒井啓子)

「中東=危ない地域」という先入観が、
私たち日本人には
染み込んでいるのではないでしょうか。
「現在でも各地で紛争が続いていて、
テロリストが大勢いる」、
そんなイメージが先行し、
「中東の国々とは
わかり合えない」という誤解が
生じているのではないかと思います。
本書は、中東で何が起きているのか、
そしてその背景にあるのは何か、
平易な言葉で詳しく解説してあります。

その8
「教育で平和をつくる」(小松太郎)

コソボってどこ?ボスニアってどこ?
本書はそうした紛争後の国や地域に
教育行政官・教育アドバイザーとして
訪れた著者の奮闘の記録です。
世界を知るということは
容易ではありません。
特にこの2国のように、
日本から地理的に遠く、また
経済等の繋がりの薄い国については
関心が低くなりがちです。
まずはこうした一冊から
世界を学び始めたいものです。

その9
「平和ってなんだろう」(足立力也)

コスタリカは
「軍隊をすてた国」として有名です。
コスタリカのシステムを
そのまま日本に導入することには
無理があるでしょう。
しかし、コスタリカ国民の、
平和に対する高い意識、
平和の本質が
民主主義・人権・環境であることを
理解し、その実現に、
前向きに取り組んでいる姿勢は
見習う必要があると考えます。

1、2は総論的、入門的な内容です。
3~5はそれぞれの地域を
各論的に論じた内容です。
日本に近い国として韓国・中国
そしてもっとも注視すべき地域として
アフリカについて述べられた
この3冊を取り上げました。
6~9は、国際協力・国際理解の
在り方について学べます。
特に民族紛争について
わかりやすく説明されています。

それぞれ社会の教科書とは
違った切り口で「世界」に迫っている
良書です。
そしてこれら9冊から、これからの
日本の在り方が見えてきます。
子どもたちはもとより
大人のみなさんにもお薦めの9冊です。

(2020.11.15)

Clker-Free-Vector-ImagesによるPixabayからの画像

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